ドライバー不足、燃料・人件費・車両維持費の上昇が続くなか、運送会社が事業を継続するためには、運賃を適正化できる取引構造が欠かせません。その鍵の一つが、荷主と直接対話できる「一次受け案件」を増やすことです。ただし、一次受けを増やすだけでは十分ではありません。営業・配車・ドライバーが同じ条件を理解し、連携して品質をつくることが、荷主から選ばれ続ける土台になります。

なぜ一次受け案件が必要なのか

協力会社や元請からの仕事は、日々の稼働を支える重要な取引です。一方で、既に運賃や条件が決まった案件を受ける形だけでは、待機、荷役、時間指定、繁忙期対応などの負担を価格へ反映しにくいことがあります。一次受け案件では、荷主と直接コミュニケーションを取りながら、輸送条件と求められる成果を整理し、運賃・付帯作業・運用ルールを設計しやすくなります。

大切なのは「中間を省けば必ず利益が出る」という考え方ではありません。現場が安定して運行でき、荷主側にもメリットがあり、その条件を双方で継続できる取引をつくることです。

単に案件を増やす営業

空いている車両を埋めることを優先し、条件の確認が後回しになる。受注後に待機や荷役、配車負担が見えてくる。

一次受けを育てる営業

自社の強みと運行条件を明確にし、荷主の課題を聞き、採算と運行の両面から提案する。

まず「どんな荷主に勝てるか」を決める

荷主開拓を始めると、業種や地域を広げすぎて活動が続かなくなりがちです。最初に、自社が安定して価値を出せる条件を整理します。車両の種類、発着地、得意な時間帯、荷姿、温度帯、物量の波、配車体制、既存の戻り便などを営業の判断材料にします。

整理する軸確認する内容荷主開拓への活かし方
輸送条件発着地、距離、時間帯、頻度、車種運行が安定する案件を選ぶ
荷物特性荷姿、重量、温度帯、荷役、破損リスク自社の設備・経験が生きる業種を絞る
採算条件待機、付帯作業、高速、外注、空車回送見積時に必要な前提を明確にする
顧客課題欠車、納品遅延、波動、管理負担、品質価格以外で選ばれる提案をつくる
ターゲット設定の例

「関東圏で、定期便または月次の出荷計画があり、時間指定・品質・繁忙期対応に課題を持つ荷主」のように、地域・荷物・課題・自社の対応力まで具体化します。

運送会社と荷主が輸送ルートを検討する様子
荷主との初期対話では、運賃の前に「安定して運ぶための条件」を整理します。

初回商談では「運賃」より先に運行条件を聞く

初回の訪問やオンライン商談で、すぐに単価を提示すると価格比較になりやすくなります。まず荷主側が抱える輸送上の問題と、現在の運用を確認します。相手の言葉をそのまま受け止めるだけでなく、配送の背景にある生産・在庫・受発注・納品先の事情まで聞くことが重要です。

  1. 01
    現在の輸送体制を理解する

    発着地、便数、物量、車種、納品先、繁閑差、現在の委託形態を確認します。

  2. 02
    困っている場面を具体化する

    欠車、納品時間、待機、急な増便、問い合わせ、破損、配車調整など、発生する場面と頻度を聞きます。

  3. 03
    判断する人と基準を把握する

    現場担当、物流責任者、購買、経営者など、関係者と選定基準を整理します。

  4. 04
    提案の前提をそろえる

    最低限必要な情報を持ち帰り、配車・運行担当と実行可能性と採算を確認します。

運行品質は、ドライバーとの連携から生まれる

荷主が一次受けの運送会社に期待するのは、車両を手配することだけではありません。指定時間に安全に届けること、納品先での対応、イレギュラー時の連絡、荷物の取り扱い、現場で得た気づきを次の運行へ生かすことまで含めて、輸送品質を見ています。その品質を最前線で支えるのがドライバーです。

営業が現場を知らないまま約束をすると、受注後に無理な時間設定や荷役条件、確認漏れが見つかり、ドライバー・配車・荷主のすべてに負担がかかります。反対に、ドライバーの経験や意見が営業へ届く組織では、実行可能な提案ができ、荷主への説明にも具体性が生まれます。

現場のドライバーさんへの敬意は、運送会社の営業品質そのものです。営業は「取れそうな仕事」を持ち帰るだけでなく、現場が安全に、無理なく、誇りを持って運べる条件を整える努力を惜しまないことが大切です。ドライバーの声に耳を傾け、その知見を荷主への提案や交渉に反映することが、持続する取引とチームの信頼をつくります。

連携する場面営業・配車が共有することドライバーから受け取ること
受注前荷物、納品先、時間、荷役、注意事項運行上の懸念、必要な準備、現実的な所要時間
運行開始時荷主との約束、緊急時の連絡先、変更ルール現場での実態、積込・納品時の注意点
トラブル時荷主への一次連絡、判断窓口、再発防止の進め方発生状況、原因の手がかり、現場で可能な対応
振り返り品質・採算・荷主からの要望継続運行に向けた改善案、負担の変化
チームワークをつくる基本

ドライバーへ一方的に「守るべき条件」を伝えるだけでなく、現場で起きていることを営業・配車が受け取り、見積・提案・ルールに反映する循環をつくります。現場への敬意を起点に、営業も条件整備と荷主への説明を粘り強く行うことが、品質と利益の両立につながります。

適正運賃につながる提案の組み立て方

運賃を上げる説明は、「コストが上がったから」だけでは通りにくいものです。荷主にとって何が安定するのか、何のリスクや手間が減るのかを、輸送条件と結びつけて伝えます。例えば、定期的な配車確保、繁忙期の増便判断、納品時間の安定、問い合わせ窓口の一本化、実績の振り返りなどです。

その上で、運賃の内訳と前提条件をあいまいにせず共有します。待機・荷役・時間指定・高速道路・燃料サーチャージ・繁忙期・再配達・特殊対応など、追加コストが生じる条件を契約前に明確にしておくことが、後のトラブルを防ぎます。

提案書に入れたい4つの要素

①荷主の課題 ②輸送の設計と運用体制 ③運賃・付帯費用の前提 ④開始後に確認する品質・改善指標

適正運賃は「値上げのお願い」だけで実現するものではありません。荷主にとっての価値と、自社が提供する運行品質・対応範囲・条件を一緒に設計することが重要です。

荷主開拓を属人的に終わらせない営業管理

荷主開拓は一度の訪問で受注になるとは限りません。接点をつくり、課題を聞き、条件を確認し、提案し、開始後に見直すという流れを継続する必要があります。担当者の記憶に頼らず、次の情報を共通で記録します。

  • 荷主名、拠点、取扱品、主要な輸送条件
  • 関係者、決裁者、現在の委託先、選定時期
  • 聞き取った課題と提案した内容
  • 見込金額、確度、次回行動、期限
  • 見積の前提、現場確認の内容、採算上の注意点
  • 受注・失注の理由と次回へ活かす学び

営業会議では、案件の数だけでなく、「一次受け候補への接点数」「商談化した件数」「見積提出数」「受注率」「受注後の採算と運行品質」を確認します。案件のどこで止まっているかを見えるようにすると、次に変える行動を決めやすくなります。

既存顧客の採算改善や営業会議の整え方については、物流会社の営業改善、KPI管理については、営業会議を成果につなげる方法もあわせてご覧ください。

一次受け案件を増やすためのチェックリスト

  • 自社が利益を出しやすい輸送条件を言語化できている
  • 狙う荷主の業種・地域・課題を絞れている
  • 初回商談で運行条件と困りごとを聞けている
  • 見積前に配車・運行担当・ドライバーの視点で条件を確認している
  • 運賃と付帯費用の前提が提案書に明記されている
  • ドライバーが現場で気づいた品質課題を共有できている
  • 案件ごとに次回行動と期限が記録されている
  • 受注後の採算と品質を次の提案へ反映している

一次受け案件を増やし、
チームで守る運行品質と適正運賃へ

荷主開拓の設計から、商談、見積条件の整理、ドライバー・配車との連携、案件管理、営業会議まで、物流現場に沿って伴走します。

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